なぜtatsumiの小物は、織物なのにしっかりと形を保つのか

※西陣織ブックカバー
西陣織を使ったTatsumiのキーケースやパスポートケースを手に取ると、多くの方がまず驚かれることがあります。それは、【織物なのに、革小物のようにしっかりしている】ということです。
西陣織や大島紬といった織物を使っているにもかかわらず、形が崩れにくく、美しいフォルムを保つ。ものによっては、そのまま自立するほどの張りがあります。ではなぜ、このような仕上がりになるのでしょうか。
その背景には、Tatsumiが43年間、和装バッグづくりの中で培ってきた「素材を見極める経験」と、「貼り合わせ」「ヘリ返し」という技術があります。
同じ西陣織でも、同じ素材ではない

Tatsumiは創業以来、大阪の自社工房で西陣織と向き合いながら、和装バッグを製造してきました。しかし、「西陣織」とひとことで言っても、すべてが同じ性質を持っているわけではありません。織物によって、
・厚み
・硬さ
・使用されている糸(シルク・ポリエステル・ちりめん 等)
・絹糸や金糸などの割合(正絹・ポリ100%・半々 等)
・織りの密度( 刺繍があるか、無地 等)
はそれぞれ異なります。つまりカテゴリーは同じ「西陣織」であっても、実質は一反・一反ごとに異なる素材です。
そしてそれらの素材を最終的には、同じ寸法、同じフォルムの商品へ仕上げなければなりません。そのため、まず必要になるのが、その織物がどのような性質を持っているのかを見極めることです。
表からは見えない「裏糸」と向き合う

西陣織の中には、表の美しい文様を生み出すために、裏側に多くの糸が渡っているものがあります。この裏糸をそのままにしておくと、バッグや小物へ加工する際の妨げになることがあります。
だからといって、全てを切ればよいわけではありません。切る位置や範囲を誤ると、表側の糸まで抜け、せっかくの文様が欠けてしまう可能性があるからです。
【どの糸を残し、どこまで処理するのか】

反物の構造を見ながら、一枚ごとに判断する必要があります。こうした作業は、規格化された素材を大量に扱う生産とは異なり、長年さまざまな織物に触れてきた職人の経験が重要になります。
織物を「プロダクトの素材」へ変える、貼り合わせ

素材の性質を見極めた後に行うのが、Tatsumiのものづくりにおいて重要な工程のひとつである【貼り合わせ】です。
織物は本来、柔らかな素材です。そのままでは、革製品のような張りや立体感を持つキーケースやパスポートケースにはなりません。そこでTatsumiでは、西陣織の表情を損なわないよう複数の素材を組み合わせ、商品に適した厚みと張りへ整えていきます。
使用する織物によってもともとの厚みや硬さが違うため、すべてを同じ仕様で加工できるわけではありません。素材を触り、曲げ、状態を確認しながら、その都度バランスを調整します。
この工程によって、柔らかな織物が、革小物のような張りを持つプロダクトの素材へと変わっていきます。
部分ごとに厚みを整える
貼り合わせた後も、そのまま商品になるわけではありません。パーツによって必要な厚みは異なるため、革製品の加工にも使われる機械を用いながら、部分ごとに厚みを調整していきます。折り返す場所、重なり合う場所、形を支える場所。
それぞれに適した厚みへ整えることで、完成したときの美しい輪郭や使いやすさにつながります。
美しい輪郭をつくる「ヘリ返し」

そして、Tatsumiのバッグづくりで長年培ってきたもうひとつの技術が、「ヘリ返し」です。生地の端を内側へ折り込みながら、美しく仕上げていく技法です。西陣織は繊細な糸で構成されているため、端の扱いは商品の印象だけでなく、耐久性にも関わります。
素材の厚みや織り方に合わせて折り返し方を調整し、角や曲線を整えていくことで、Tatsumiの小物に見られる端正な輪郭が生まれます。
「布を使った小物」ではなく、「織物を現代に活きるプロダクトへ」

一般的な布製のポーチや和小物は、生地の柔らかさをそのまま生かした袋状の構造も多く見られます。しかしTatsumiが目指しているのは、それとは少し異なります。
西陣織を始めとした日本の伝統素材が持つ光、文様、質感を残しながら、
張りがあること。
形を保つこと。
手に取ったときに上質さを感じられること。
そして、日常で使えること。
そのために、和装バッグ製造で培ってきた技術を応用しています。「貼り合わせ」で素材に適切な張りを与え、「ヘリ返し」で美しい輪郭へ整える。こうした目には見えにくい工程を積み重ねることで、Tatsumiの小物は、織物を使用しながらも革小物のような立体感を持ち、美しいフォルムを保つことができます。
【日本の伝統織物を、ただ使うだけではなく、現代の日常で使えるプロダクトへ。】
それが、43年間のバッグづくりから生まれたTatsumiのものづくりです。